NY金:7月の米雇用統計による「量的緩和の早期縮小観測」の行方がカギ
2021/08/05 12:51:38
米労働省が日本時間8月6日午後9時30分に7月の雇用統計を発表する。景気動向を敏感に反映する非農業部門就業者数の市場予想は前月比88万人増加と、前月の85万人増加から伸びが加速する見通し。
『市場予想を上回った場合』
米連邦準備理事会(FRB)のウォラー理事は2日、向こう2回分の雇用統計で自身の予想通りに雇用がそれぞれ80万〜100万人増加すれば、米FRBは10月までに量的緩和措の縮小に着手する可能性があると予想。また、クラリダ米FRB副議長は4日、米経済が新型コロナウイルス禍から驚異的なペースで回復していることを踏まえると、2023年に利上げが可能になる公算が大きいとの見方を示したほか、同日には米セントルイス地区連銀のブラード総裁と米ダラス地区連銀のカプラン総裁もテーパリング(量的緩和の縮小)の早期着手を提唱。
7月の非農業部門就業者数の増加幅が市場予想通りに2カ月連続で80万人超えとなり、前述の米FRB高官の発言で強まった量的緩和の早期縮小観測を後押しする材料となれば、米長期金利とドル相場が上昇することが予想され、ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金相場は中心限月の期近12月限が1800ドルの節目を割り込む可能性がある。さらに増加幅が100万人を上回った場合、中心限月の継続足で6月29日に付けた安値1750.10ドルを試しに行く相場展開になる可能性もある。
『市場予想を回った場合』
しかし、雇用データを手掛ける米民間会社によると、米国の7月の雇用状況は連邦政府の手厚い失業給付を期限前に打ち切った州や新型コロナウイルスのデルタ型変異株の感染拡大が深刻な地域で弱い動きとなったもようで、雇用者数の伸びが鈍化したとみられている。また、米民間雇用サービス会社ADPが4日発表した7月の全米雇用報告によると、非農業部門の民間就業者数は前月比33万人増となり、市場予想の69万5000人増を大幅に下回った。ADPのチーフエコノミストは「雇用の伸びの減速は全ての規模の企業で見られた」と説明した。
前週開催された米連邦公開市場委員会(FOMC)後の会見で、パウエルFRB議長は「量的緩和策縮小の条件の一つである労働市場の改善には時間がかかる」との見方を示した。また、3日にはボウマン理事が「雇用は依然として、新型コロナウイルス危機前の水準を下回っている」との認識を示し、失業者が労働市場に戻るには時間がかかる可能性があると語った。
非農業部門就業者数の増加幅が市場予想を下回った場合、前週の米FOMC結果を受けた「米FRBが量的緩和の縮小を急がない」との見方を支える材料となり、NY金は中心限月の継続足で7月29日に付けた直近高値1837.50ドルを試しに行く相場展開が予想される。
前週の米FOMC声明やパウエル米FRB議長の会見で、ニューヨーク市場では量的緩和の早期縮小観測が後退したが、4日の米FRB高官の発言で同観測が再び強まっている。ただ、7月の米雇用統計で非農業部門就業者数が前月比100万人増加といった上振れでもない限り、量的緩和の早期縮小観測や2023年の米利上げ観測が一段と強まる状況にはならないとみている。また、今月は26〜28日に市場関係者が注目している米ジャクソンホール金融・経済シンポジウムが開催されることから、NY金は米FRBの金融政策に対する思惑に左右される相場になるだろう。
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