今週のNY金は上下動、地政学的リスクや米金利見通しなどを手掛かりに
2022/11/18 14:33:37
今週(14日〜18日)のNY金は上下動の後に下落。 米経済指標を受けた米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げペースの鈍化期待や、ロシア製ミサイルがポーランドへ着弾したとの報道を手掛かりに金価格は一時上伸。しかし、買い一巡後は上げ幅を削られ、週末にかけて下落する展開となった。
15日、ロシア軍によるウクライナへの大規模なミサイル攻撃が発生する中で、ウクライナと国境を接するポーランドへとロシア製のミサイルが着弾した。北大西洋条約機構(NATO)加盟国のポーランドへの攻撃は、条約締結国全体への攻撃とみなされ、他の締結国は武力の使用を含むあらゆる行動でポーランドを援助することが求められる。このため、ウクライナとロシア間の紛争が他国へ飛び火し、第三次世界大戦が勃発する恐れもあった。
安全資産として金は買われて値を伸ばしたが、ポーランド政府がこれはポーランドに対する意図的な攻撃ではなかったとし、ひとまず大戦勃発の危険が回避されると、手じまい売りなどが入りNY金は上げ幅を縮小した。
ポーランドの見解として、同国へ着弾したミサイルを、ウクライナ軍がS-300防空システムで用いたミサイルと判定。同防空システムはロシア軍では「S-300」、NATOのコード名はSA-10「グランブル(Grumble)」と呼ばれる長距離地対空ミサイルシステムで、ソビエト連邦時代に開発されたが、現在も現役で運用される。今回の事件ではウクライナ軍が発射した旧型のミサイルが制御を外れて迷走した可能性が高いとしている。
米FRBを始めとした各国中銀の利上げペースを巡る思惑も交錯。米消費者物価指数(CPI)や米卸売物価指数(PPI)が市場予想を下回ったことで、米FRBが利上げペースを緩めるとの思惑が市場で台頭し、CMEのフェドウォッチでは12月の米連邦公開市場委員会(FOMC)の利上げ幅が0.5%となる確率を8割以上織り込み、来年第1四半期に政策金利FF金利誘導目標5%‐5.25%を下限としてターミナルレート(最終到達点)を迎えることを見込んでいる。
ただ、米FRB高官らはインフレが高過ぎるとの見解を崩していない。現状、景気後退(リセッション)が起きても金融引き締めを継続する強い姿勢を示すことで市場へ影響力を及ぼしている米FRBが、12月の米FOMCで利上げ幅を縮小した後に、来年に再度利上げ幅を拡大するようだと、米FRBが市場へ与える影響力が薄れると共に期待インフレ率が上昇し、その後の柔軟な対応が困難になる可能性があることも、米FRBが利上げ幅の縮小に慎重になる理由のひとつ。今後発表される経済指標がインフレ圧力の高止まりを示す内容になれば、逆に市場の予想を上回る金融引き締めが実施される可能性も強まってくる。当面は経済指標と米FRB高官らの発言に一喜一憂する荒い値動きが続くと考えられる。
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