/アナリストの目

今週のNY金は小動き、米FRBの利上げペース加速観測が上値を押さえる
4/8/2022 5:07:45 PM

今週(4月4日〜8日)の金価格は小動き。
米労働省が1日に発表した3月の米雇用統計では、景気動向を示すとされる非農業部門雇用者数が前月比43万1000人増、失業率は3.6%と2020年2月以来の水準に回復。米労働市場の回復を示す内容となった。3月の米雇用統計と4月12日に発表予定の米消費者物価指数(CPI)は、5月3日、4日に開催される次回の米連邦公開市場委員会(FOMC)での決定に大きな影響を与えると考えられており、米連邦準備制度理事会(FRB)が積極的に利上げを実施するとの観測が強まったことから、NY金は一時下落した。
しかし、売り一巡後はロシアのウクライナ侵攻を巡る地政学的リスクが継続していることや、ロシアへの経済制裁による原油の需給ひっ迫に伴う原油価格の高止まりにより、インフレが継続するとの見方などから、安値では買い戻され、NY金は週末にかけて値を戻す展開となった。



ブレイナードFRB理事は5日、ミネアポリス連銀のイベントにオンラインで講演し、FRBのバランスシートの縮小(QT)の実施を5月から開始する方針を示した。ロシアのウクライナ侵攻が食品や原油の価格を一段と上昇させるリスクにも触れ、同氏は本来はハト派で知られるが、主に低所得層の生活に打撃を与えるインフレの抑制を急ぐために金融引き締めを行うタカ派的な姿勢に転じている。
また、6日に公開された3月15日、16日両日開催の米FOMC議事要旨によると、保有資産を最大で月950億ドル圧縮する案や、政策金利となるフェデラル・ファンド(FF)金利の誘導目標を50ベーシスポイント(bp)引き上げることも検討されたが、ロシアのウクライナ侵攻が市場に与える影響を踏まえ、積極的な利上げは見送られたことが示された。このため、次回5月の米FOMCで米FRBのバランスシートの縮小が実施されるとの市場の見方が強まった。

米FRBのバランスシートの縮小が充分に進んだ場合、米FRBは目標とする2.5%の水準まで利上げを急ぐとの見方が強い。現在のFF金利の誘導目標は0.25〜0.50%のため、目標達成のためには50bpの利上げが4回必要となるが、市場関係者からは現在の米債券市場は既にこれを織り込んでおり、米FRBが目標まで利上げを実施しなかった場合のリスクの方が高くなっているとの声も聞かれる。

石油輸出国機構(OPEC)加盟国とロシアなどの非加盟の産油国で構成する「OPECプラス」は3月31日、閣僚級会合を行ったがOPECプラスは追加増産の見送りで合意。これを受け、国際エネルギー機関(IEA)加盟国は4月1日に緊急閣僚会合を開催し、石油備蓄の協調放出を決定した。米国以外の加盟国が合わせて6000万バレルの石油備蓄を追加放出する方針で合意した。米国のバイデン政権はこれに先立って3月31日、約1億8000万バレル(今後6カ月間で日量100万バレル)の追加放出を決定している。
 しかし、IEAによると世界第2位の原油輸出国のロシアは、ウクライナ侵攻前、日量約1000万バレルの原油を生産し、その約半分の約500万バレル輸出していた。今回のIEAの決定で石油備蓄を放出し、需給ひっ迫を緩和することはできるが、ロシアからの原油輸出が抜けた穴を完全に埋めるのは困難との指摘もある。



なお、ウクライナののゼレンスキー大統領は7日、民主主義国家はロシア産原油を拒否すべきだと述べ、禁輸措置で迅速に合意できていないことがウクライナの人々の命を奪っていると訴えており、各国政府はウクライナ情勢と自国のエネルギー政策の間で難しい舵取りを迫られている。欧州経済に対しては、原油の需給ひっ迫によるインフレ抑制のために欧州銀行(EU)が金融引き締めを実施することで、インフレ環境下で景気が後退するスタグフレーションが発生する可能性がある、との懸念が台頭しており、先行き不透明感が強いことからも、安全資産として金は買われた。

欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会は5日、ロシア産の石炭輸入禁止を含む追加制裁案を提出。EUによるロシア産石炭禁輸措置は金額ベースで年間約40億ユーロに相当するが、昨年のロシアからの石油・ガスの輸入額である1000億ユーロに比べると小規模に留まる。また、主要7カ国(G7)は7日、ロシアへの追加制裁を盛り込んだ首脳声明を発表。日本政府は8日、他国と足並みを揃える格好で、段階的にロシアからの石炭輸入を削減する方針を決定した。